1.新不動産登記法の概略
今回の不動産登記法改正の目的
平成16年6月に国会で成立した新不動産登記法は、105年ぶりの
大改定となりました。
今回の改正は、インターネットを経由して登記申請をする、いわゆる
オンライン申請の導入を前提にして、見直しが行われた点が大きな
特徴です。
インターネットによる登記申請が到来することになりました。
法務局・支局・出張所(以下『登記所』という)に行かなくても登記ができることになります。
A.登記原因証明情報について
B.権利証について
C.登記識別情報の通知について
D.オンライン申請について
E.保証書制度と事前通知制度について
F.資格者代理人による本人確認情報の提供制度について
2.新法施行後の手続き変化の流れ
大きな改正事項は以下のとおりです。
法改正後の登記手続は、二段階で変化していくことになります。
@まず、平成17年3月7日の新法施行とともに全ての登記所で、次のよ
うな手続きに変更されます。
T.保証書制度廃止→事前通知制度
司法書士等の資格者代理人による本人確認情報の提供制度導入
U.必要書類が変わります→登記原因証明情報の必須化
V.その他の変更
Aその後、順次、オンライン申請が可能な登記所として、法務大臣の指
定を受ける(以下『オンライン指定庁』という)ごとに以下の点が変更と
なります。
IV.オンライン申請の開始
V.権利証交付廃止→登記識別情報の通知、登記完了証の通知
保証書制度から事前通知制度・司法書士等の資格者
代理人による本人確認情報の提供制度導入へ
1.権利証(登記済証という)がない場合の、これまでの対応
これまで、権利証を紛失したり盗難にあったりして、権利証を提出
できない場合、保証書により登記申請をしていました。
所有権に関する登記申請に権利書を提出できない場合は、保証書と
印鑑証明書により売主等のか記義務者本人によるを記申請であることを
証明していました。
登記所はこの場合にハガキによる事前通知をし、登記義務者がその受
け敢ったハガキを登記所に提出して間違いない旨の申し出をすることで、
本受付となって、登記がされていました。
このように、事前通知のハガキを提出することによって、登記の順位が
確保されていました。
また、所有権に関する登記以外(たとえば、抵当権設定)の場合、登記
済証が提出できないときは、保証書と登記義務者の印鑑証明書で、登
記義務者本人による登記申請であることを証明し、これにより登記がな
された後、登記所からハガキによる雅後通知がなされていました。
しかし、この保証書は不正な登記事案にしばしば利用されるなど問題点
がかねてから指摘されていました。
また、登記の真正担保機能としての有用性にも疑問が持たれていました。
そこで、不動座登記法の改正に伴い、保証書制度は廃|llされ、より充実さ
せた事前通知制度と司法書士等の
資格者代理人による本人確認情報の
提供制度]が、新たに導入されました。
2.事前通知制度
新法のもとでは、登記を申請する際に登記所に権利証や登記識別情報
の提供をしなければなりません。
登記識別情報|が他人にしられてしまった場合の登記識別情報執行制度
やその管理をしたくないという希望を考慮しての登記識別情報不通知制
度を利用することなどで、登記申請の際に登記識別情報を提供すること
ができないケースがあります。
そこで、何らかの方法で本人であることを確認する必要があります。この
本人確認するための制度が 事前通知制度です。紛失等によって権利
証が提出できない場合も同様です,、
この制度では、売主等登記義務者に対して、郵送で登記申請があった旨
の通知が行われます。
通知を受け取った不動産登記名義人が、これに記名し実印を押して、
通知
された登記の登記の申請が真実であることを登記所に申し出た
ときに初めて登記が実行されます。
これは本人限定受取郵便によって行われ、本人確認が行われます。
このように、事前通知制度によって、本人確認が行われた上で、登記が
実
行されることになります。
3.司法書士等の資格者代理人による本人確認情報の提供制度
登記識別情報も権利証も提供できない場合、原則として、この事前登記
通知により登記がなされることになりますが、事前通知を省略して登記申請
できる方法が認められています。
司法書士等資格者代理人による本人確認情報の提供制度です。
具体的には、申請代理人である司法書士が本人と面談して、さらに、たとえ
ば 本人のパスポートや運転免許証等の身分証明書の提示を受けて本人
である ことを確認しその面談日時・場所、所定の確認方法による本人確認
をした旨等、司法書士がその責任において本人確認をしたことを明らかにし
た上で、その内容を本人確認情報として登記所に提供するというものです。
この場合は、その本人確認情報が適正であれば事前通知を省略して登記
が実行されます。
たとえば、不動産売買の場合、売主は、司法書士と面談し運転免許証等を
提示し、本人確認情報を司法書士が作成できるようにした上でその他の必
要書類と引き換えに、取引決済が円滑にすすめられます。
ただし、司法書士が適正な本人確認情報を提供できない場合は、この制度
を利用することはできません。
その時は、原則どおり、事前通知による登記となります。
4.その他のポイント
@保証書制度廃止の時期
この保証書制度廃止、事前通知司法書士等の資格者代理人による本人
確認情報の提供制度導入は、改正法施行と同時に全ての登記所で適用
されます。
A準備すべきこと
また、権利証の提出や有効な登記識別情報の提供ができるかを事前に確
認し、提出できない場合は、事前通知又は司法書士等の資格者代理人に
よる本人確認情報の提供の方法によることになるので、そのための準備が
必要です。
具体的には、事前通知の場合は、申請後一定期間内に通知を受けた書面
に 実印を押して登記所に提出する必要があり、その提出がない場合には
登記が 実行されないこととなる旨を当事者に説明すること、司法書士等の
資格者代理人による本人確認情報の提供の場合は、司法書士との面談
日の約束、その際の運転免許証等の身分証明書を準備することなどです。
このように、権利証や有効な登記識別情報を提出できるかどうかにより、
登記申諸手続の所要時間等に違いがありますので、売買等の不動産取引
の決済には少なからぬ影響が生じます。
提出できない場合には、早めに司法書士相談して下さい。
5.心要書類が変わります(登記原因証明情報)
これまでも売買契約書や抵当権設定契約証書、抵当権解除証書などの
登記の原因を証する書面、いわゆる登記原因証書の添付は要求されて
いました。
しかし、この登記原因証書がない場合には、申請書副本(登記申請書と全
く同様の書面)を添付することで登記申請が可能でした。
そのため、これまでは、登記の原因を証する書面がなくても、申請書副本
を
添付することで登記を行うことができました。
@.登記原因証明情報の添付が必要
新法施行後は、申請書副本添付による登記申請は廃止され、これまでの
登記原因証書に代えて申請書副本を提出していた登記についても
登記原因証明情報(登記の原因及びこれによる物権変動の存在を証明す
る情報)の提供が必要となります。
具体的には、売買であれば、売買契約書・領収書、登記所用に作成した
証明書、抵当権設定では抵当権設定契約書、抵当権抹消では解除証書
等で、これらの書面には当事者の署名又は記名押印が必要となります。
この登記原因証明情報の提供は、全ての登記所で必要となります。
今後は、必ず、取引の際に登記原因証明情報となる書面に、当事者の著名
又は記名押印が必要となります。
これまでは、申請書副本でも登記申請ができましたので売主等登記義務者
は、権利証を持参して司法書士宛の登記申請委任状に署名又は記名押印
することで、登記申請が可能でした。
新法施行後は、委任状への押印のみでは足りず登記原因証明情報
へ
の署名又は記名押印が必要となります。
6.オンライン申請の概要
@.概要
オンライン申請は指定を受けた登記所から順次適用となります。
指定がない登記所へは、オンライン申請はできません。
また、オンライン指 定庁となった後でも、書面申請は可能です。
A.ポイント
オンライン申請をする場合
目的とする不動産が、指定を受けた登記所の管轄であるか、すべての
添付情報をオンラインを利用して電磁記録により送信しなければなりません
のでそれが可能であるのか、特に登記識別情報・電子署名・電子証明書
が用意できるか、確認する必要があります。
B.書面申請する場合
書面による申請であれば、指定後も全ての登記所で可能です。
ただし指定後はオンライン申請が登記所の開庁時間外でも送信可能となり
ますので、朝一番に書面による申請をしてもその日の1番の受付になるとは
限りません。
7.権利証から登記識別情報へ
保証証廃止や登記原因証明情報の必要的提出は平成17年3月7日の
新法施行と回時にすべての登記所で適用となりますが、以下に述べます
登記識別情報への移行は、オンライン指定庁から順次適用されます。指
定がない登記所への申請では、今までと同様に登記完了後、登記済証
(権利証)が発行され、それをその後の登記申請で使います。
@.権利証についての取扱
これまでは、登記が完了すると、不動産の権利を取得した人には登記済証
(登記所の印鑑を押した書類)が交付されていました。
これが、いわゆる権利証です。
いままでは、権利証を持っていることが、不動産の権利者としての確認資料
のひとつでした。
つまり、不動産を売却したり担保に入れたりする場合には、この権利証を
登記所に提出することが必要だったのです。
しかしオンライン申請による場合、情報を電子情報として送信しなければ
ならないことから、書面としての権利証はオンライン申請では使うことが
できません。
そこでこれまでの権利証は登記が完了しても交付されないこととなりました。
A.権利証に代わり 登記識別が通知されます
今後は、登記が完了すると、買主等の登記名義人に登記識別情報が
通知されることになります。
登記識別情報とは、登記所が無作為に選んだ12桁の英数字(AからZまで
およびOから9まで)です。
キャッシュカードやクレジットカードで使っている、暗証番号が長くなった
ものと同じように考えればわかりやすいでしょう。
これからは、この番号を知っていること]が、不動産の権利者としての確認
資料 のひとつとなります。
つまり、不動座を売却したり担保に入れたりする場合には、不動産ごと、権
利者 ごとに発行されるこの登記識別情報と呼ばれる12桁の英数字を登
記所に提供 することが原則となります。
B.今持っている権利証の取扱
現在発行されている権利証は、使えなくなるわけではありません。
オンライン指定庁となった後は、登記済証(権利証)は発行されず、登記識
別情報が通知されます。
それを次の登記申請で使うことが原則となるというだけであり、今後も、
すでに発行されている権利証と、オンライン指定庁になるまでの問に発行
される権利証は、当面にする登記申請の際に提出することが原則です。
C.移行の時期
前述のとおりの登記済証(権利証)の発行から登記識別情報の通知への
移行は、オンライン指定庁から順次開始されます。
新法施行後も、オンライン指定庁となるまでは、これまでと同様に権利証
が発行されます。
従って、売主等の登記義務者が以前に登記を受けた時点が、オンライン
指定庁となる前だったのか、オンライン指定庁となった後なのかによって、
準備する書面にも違いが生じます。
D.登記識別情報の管理の徹底
これまでは、権利証そのものを大事に保管していれば、他人に悪用される
可能性は低く、ひとまず安心でした。
これに対し、登記識別情報は、これを知っている人がその不動産の権利者
と見られてしまいます。
つまり、一度他人に登記識別情報を知られることだけで、悪用されてしまう
危険性が生じてしまいます。
登記識別情報は書いてある紙を人に渡さ ないのみならず人には見られ
ないといった厳重な管理が必要となってくるのです。
キャッシュカードの暗証番号は親しい方にでも教えることはないと思います。
同じように登記識別情報も、他の人には見せない・教えない・渡さないよう、
管理の徹底が必要です。
もしうっかり他人に知られてしまい、悪用されてしまう危険性が生じた場合に
は登記識別情報そのものを失効させる制度があります。
また、登記識別情報の管理をしたくないという方のために、登記識別情報を
はじめから登記所から通知しないことを求めることも可能です。
E.有効な登記識別情報等の必要書類と代金の交換
これまでは、不動座売買では権利証等の書類と代金を交換して取引をして
きました。
これからの不動産取引には、取引対象となっている不動産についての権利
証または有効な登記識別情報が必要になります。
登記識別情報の有効性を確認するために有効証明の制度があります。
また、登記識別情報は、不動産ごと、申請人ごとに発行されます。
不動産取引にあたっては、必要なすべての登記識別情報があるのか、注意
する必要があります。
たとえば、土地1筆・建物1棟を夫婦共有で購入したのであれば、合計4個
の登記識別情報が存在することになります。
※有効な登記識別情報が提供できない場合には、事前通知または司法書士
等による本人確認情報の提供が必要になります。
事前通知制度・司法書誌等の資格者代理人による本人確認情報の提供制
度を参照。
8.その他の主な改正点
@ 登記の構成部分の呼称が変わります。
たとえば、甲区・乙区をまとめて権利部。
主たる建物等当該不動産について表題部に最初にされる登記を表題登記
と呼びます。
A 予告登記は廃止となります。
B 出頭義務が廃止となり、郵送申請(宅配使を含む)も可能となります。
C 受領証の返納義務がなくなります。
オンライン申請では受領証の交付はされません。